今枝友加カンテソロライヴ

時間の経過とともにパワフルに際限なく伸びていく、
今枝友加さんの声。
雑味も雑念も見事に取り払われた、
まさに研ぎ澄まされた漆黒のフラメンコだった。
現在フラメンコは、他ジャンル、または多国籍的な融合を、
様々なアーティストが試み、フラメンコの在り方を模索している時代であり、
もちろん真剣に開拓していく姿そのものが
すべてフラメンコであるといえるのだが、
その中にあって今枝さんは、躊躇なくフラメンコの源流に踏み込み、
挑み続けている孤高のアーティストだ。
孤高ではない、と映るかも知れない。
今枝さんのライヴでは常に多くの実力派アーティストが共演し、
ファミリーのように親しく賑やかな盛り上がりの中で、
彼女は、そこに生まれ来るフラメンコの空気を大切にする人であり、
その中でひときわ輝くカリスマ性を持っている人だからだ。
けれど、今回実現したカンテソロライヴで確信した。フラメンコのカリスマは、闇の中で爪を砥ぎ続けるがごとく、
孤独の中で黒いフラメンコを磨き続ける強さを持っているからこそ、
カリスマの輝きを持ち得るのだと。
もしフラメンコを求めながらもフラメンコの核心を見失いそうになったなら、
今枝友加さんのカンテを聴けばいい。
そして、今枝さんの一振りの踊りの中にもそれを感じた。しなやかでありながら、
虚飾を排除した、揺るぎないフラメンコのフォルム。
これがフラメンコの“粋”なんだ。

パセオフラメンコライヴVol.034
今枝友加 カンテソロライヴ
カンテ:今枝友加
ギター:俵英三
パルマ:井山直子
2016年10月13日 高円寺エスペランサ
(写真撮影:編集部 小倉泉弥)