奥村土牛
「どこまで大きく未完成で終わるかだ」
日本画の大家、奥村土牛(1889−1990)は、
85歳で書いた自伝の中でこう語っている。
その言葉のとおり、どっしりと生き抜き、亡くなる直前まで描き続けた。
代表作となる「鳴門」は70歳、
「醍醐」は83歳の時に発表している。
平成2年の院展に出品した「富士」が絶筆となり、その年の9月に死去。
享年101歳。
学生の頃、奥村土牛の存在を知った。
「鳴門」や「醍醐」を初めて間近で観たときは、
大胆で素朴な画風とその奥に感じられるおおらかな優しさに
胸を打たれた。
そして真摯で力強く、それでいて淡々とした生き方に感銘を受けた。
大器晩成の奥深さを見る思いがした。
けれど今になって振り返ると、
当時は未熟過ぎて、その凄さを
実はほとんど解ってはいなかったようにも思う。
そして、先日48歳になったばかりの今もたぶん解っていないのだろう。
「どこまで大きく未完成で終わるか」
巨匠が85歳で語ったこの言葉を、今はきっと言う資格もない。
私はいったい何を焦っていたのだろう。
死ぬまで淡々とせいいっぱい生きるだけでいい。
そしてさりげなく85歳になったら
私も意気揚々と叫ぼうと思います。
「どこまで大きく未完成で終わるか」
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