2011-01-01から1年間の記事一覧

再び『家霊』

(引用) 「宿命に忍従しようとする不安で逞しい勇気と、救いを信ずる寂しく敬虔な気持ちとが、その後のくめ子の胸の中を朝夕に縺れ合う。それがあまりに息詰まるほど嵩まると彼女はその嵩を心から離して感情の技巧の手先で犬のように綾なしながら、うつらう…

移ろい

日の名残りと夜の闇とが入れ替わってゆく。 思っっていた以上に時間をかけて 夜になっていく。 作家の堀江敏幸氏が須賀敦子氏に向けて 書いた言葉を思い出す。 「『曖昧』であるがゆえに豊饒な時空」 「曖昧」とは 漠然としたひとつのかたまりなどでは なか…

ビジョンを持つこと

やり始めたことをやめてしまうのは 罪悪のように感じていた。 だからこれまでに着手したことは 物理的な状況が変わらない限り すべて続けようと努力してきた。 でもいつの間にか 自身のキャパ以上のものを抱え込んでしまっていた。 真の目標を見失い 継続す…

余計なもの

「そろそろココアを買ってきて」 コーヒーを淹れながら次男がいう。 そうだね、ココアが飲みたい季節になったね、 と同調したら、 「普通のをね」 と念を押すようにいわれて、 苦笑いするしかなかった。 身体に良さそうなので、黒豆ココア。 老舗のブランド…

漆黒の音楽

べートーヴェンのピアノ・ソナタ集より、 第29番 変ロ長調 作品106《ハンマークラヴィア》 第30番 ホ長調 作品109 そして、 第17番 ニ短調 作品31の2《テンペスト》 第21番 ハ長調 作品53《ワルトシュタイン》 第26番 変ホ長調 作品8…

線路は続く

山手線の窓から、新幹線が目に入ったとき、ふらりとそれに乗って、どこかに行ってしまいたいとよく思う。 隣に伸びる線路は、遠くのどこかに続いている。次の駅でひょいと乗り換えるのは容易いことだ。 行った先の保証は何も無い。でも、今の暮らしの先にも…