ビジョンを持つこと

 やり始めたことをやめてしまうのは
 罪悪のように感じていた。
 だからこれまでに着手したことは
 物理的な状況が変わらない限り 
 すべて続けようと努力してきた。
 でもいつの間にか
 自身のキャパ以上のものを抱え込んでしまっていた。
 真の目標を見失い
 継続すること自体が目的になり
 どこかすり減ってきてしまった自分がいた。
 最近になって
 ひとつだけ
 長い間引きずってきていたものを
 手放した。
 好きなことだったし
 それなりに技術も身に着いてきたものだった。
 でもなにかずれのようなものを感じるようになっていた。
 遠い過去の自分の憧れを
 今の自分が叶えてあげていることだったと
 おぼろげながら気付くようになっていた。
 続けることだけにこだわる
 頑なな自分が
 それから目を逸らさせていたのかもしれない。
 
 それをやめるかどうかという
 些末な問題にこだわるのではなく
 長い射程距離でビジョンを明確にすれば
 手放すものが
 自然に見えてくるものなのだ。
 そう気づいたとき
 負い目を感じることなく
 ごく自然にやめることができた。
 いま、穏やかな気持ちで
 ブラームスやベートーベンを聴くことができる。
 大切なものに対して
 丁寧な気持ちで接すること
 この心地よさを久しぶりに実感している。
 この精神の方向性の精度を
 さらに高めていきたい。