移ろい

 日の名残りと夜の闇とが入れ替わってゆく。
 
 思っっていた以上に時間をかけて
 夜になっていく。

  作家の堀江敏幸氏が須賀敦子氏に向けて
  書いた言葉を思い出す。
「『曖昧』であるがゆえに豊饒な時空」

「曖昧」とは
 漠然としたひとつのかたまりなどでは
 なかった。

 移ろいゆくどの場面を切り取ったとしても
 それぞれに違った色彩が浮かび上がってくる
 無限の瞬間の集合体だったのだ。

 明暗や白黒の間に存在する
 豊かで限りない機微を感じ取ろうとし
 表現しようとするから
 人は苦しみとともに
 美しくなれるのではないか。


(新宿都庁展望台16:20頃から17:20頃にかけて)