ドラクロワ『ライオン狩り』 ボルドー展より

国立西洋美術館ボルドー展を見て来た。

ドラクロワの『ライオン狩り』はやはり凄かった。幅360cmの大作は二次元を越えた生々しい生命力を放っていた。

この絵はドラクロワがパリ万博出品のために描いたもので、後年、火災で上部を焼失してしまったのだが、若き日のルドンが、焼失前の絵を模写したものが残っており、その絵もいっしょに展示されていた。それによってこの作品の全貌が解るというわけなのだが、その全体像を知ったとき、なるほどこんな絵だったのか、と納得する以上に、胸が痛むような感情をおぼえた。それは直感的な哀しみだったように思う。

現存するドラクロワの絵を見た限りだと、ライオンが人間を押さえつけ、勝利の雄叫びを上げている様子を描いているように思える。けれど本来描かれていた場面は、さらにこの上に馬に乗った人間がいて、今まさにこの猛獣らを仕留めようとしている緊迫した瞬間であった。ライオンの表情は断末魔の唸りなのかも知れなかった。

ドラクロワの構図は見事だった。この絵は単なる人間の勝利を描いたものではなく、ピラミッド型の構成によって、個々の力では抗えない支配による圧力、そんな不条理を浮き彫りにしているように感じた。直感的な哀しみは、虚しさに近いものだった。

人間賛歌の皮肉をも描き切るドラクロワの筆の凄みに圧倒される。