新しい年に

 ブラームス交響曲第1番を聴いて一年を締める。
 というつもりが、新しい年を迎えていました。
 
 この若い理想と自意識の葛藤の塊のような交響曲が、
 大好きだった時期もあったのだが、
 その重苦しさから、ここ数年意識的に遠ざかっていた。
 それがまた昨年の秋頃から、自ら求めるように聴くようになっていた。
 
 第4番は、ずっと聴き続けていた。
 重厚なのは共通しているが、
 晩年に創られたこの曲は、
 精神と技巧が高度なところで結びついている圧倒的な完成度と包容力があり、
 まだ至らない自分自身を委ねることができたのだと感じる。

 第1番から一時離れたくなったのは、
 その若さから来る自信と劣等感の混沌とした、
 しかしながら、表現せずにはいられない勢いのようなものに、
 少し辟易してしまっていたのかもしれない。

 そんなことを意識した上で、無性に聴きたくなったのだった。
 そしてそれは新鮮な共感を伴って聞こえてきたのだ。

 どんなに見上げても蝶にはなれない私は、
 地道にそして地味に歩んでいくことしかできないことに、
 ため息をつきながらも、
 その過程を深く貪欲に味わい尽くすしかない。

 そういう気持ちの変化が改めて第1番に向かわせたのだと
 自分なりに分析している。

 飛躍するにはパワーが必要であるように、
 ぬかるんだ道を歩み続けるのも相当なエネルギーがいる。

 転ばないように足元に目を落とすだけで今はせいいっぱいで、
 先など見えない。
 でも歩き続けていくしか、抜け出す方法はない。

 そんな心づもりの新年であります。

 皆様にとって素晴らしい一年となりますように、
 心からお祈り申し上げます。

 本年もよろしくお願いいたします。