『冬の旅』の憂いと歓び
- アーティスト: フィッシャー=ディースカウ(ディートリヒ),シューベルト,ムーア(ジェラルド)
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: CD
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ディースカウの声の美しさは正統派のそれだと思う。知的で抑制された深さがある。往々にして真に美しいものはその欠点の無さゆえに、耳を傾けていても跡を残すことなく流れて行ってしまう。けれど失ってみて改めてその得難い偉大さに気付かされる。その類稀なる美声の背後にある思考、鍛錬、そして人生に思いを馳せ、その高い美意識に改めて畏れを抱く。
自分の未熟さを思い知る。しかしこれから齢を重ねていくにつれて、ディースカウの歌うシューベルトの世界に共鳴していくことが出来るのではないかという予感もある。それは同じく死に一歩ずつ近づきながら少しずつ何かを理解していくという憂いを帯びた歓びである。