壁を見上げて

ロッククライミングで越えなければならないような壁がある。
それは威嚇するかのようにせり出してきている。
効率の良い登り方など私は知らないが
とにかくがむしゃらに登って行く体力だけはある。
途中で足を踏み外して落ちてもいい。
力尽きて死んでもいい覚悟もある。

なのに
この壁には何の突起もないのだ。
なすすべのない状況に
先走る気持ちと
心もとない虚しさが
入り混じって押し寄せてくる。

手で掴むための
そして足場になる突起を
届くところからひとつずつ
地道に自分で取り付けながら
登っていくしかない。
そこから始めていかなければお話にもならない。
壁を見上げてため息をついている暇はないのです。