新宿芸術家協会公演Vol.17 「お伽草紙を踊る 〜現代のカオス 新宿より〜」

新宿芸術家協会公演Vol.17
お伽草紙を踊る 〜現代のカオス 新宿より〜」
6/14(金) 新宿(東京)四谷区民ホール

「新宿のお伽話」

新宿芸術家協会公演Vol.17を観てきた。

この公演シリーズを観ていると、新宿という街に住み、そこを拠点に教授活動、芸術活動を続けているアーティストたちが本当にこの街に愛着を持っているのが伝わってくる。

テーマには「現代のカオス 新宿より」という言葉が、毎回副題として添えられているのだが、この街のカオスをカオスのまま愛し、カオスの中で生きているからこそ、芸術家たちは既成概念に捉われない着想でテーマを発展させ、カオスに呑み込まれない強烈なエネルギーをもって、鮮やかな創作を繰り広げて行く。

第1部はフレッシュコンサート。新人舞踊家たちの意欲ある踊りが清々しい。
今回のテーマである「お伽草子を踊る」は第2部で踊られる。

まさにカオスの中で見る極彩色の幻想のような舞台だった。
小林祥子さんのモダンバレエによる「舌切り雀」、欲望の象徴である大きいつづらに棲む、もののけ達の踊りが生々しい。和田寿子さんの「安寿と厨子王」の物語は、亡き娘、安寿を想う母の姿が痛ましかった。鈴木恵子さんの中国舞踊による「猪八戒」は、孫悟空が化けている花嫁を背負う猪八戒のユニークな踊り。中国舞踊の伝統芸だろうか、猪八戒の等身大のぬいぐるみを体に身に付けて、背負われているように見せる演出に大いに笑った。佐藤雅子さんの「安珍清姫」は、典雅なインド舞踊によって踊られ、そこには高貴な救いの光があった。大谷けい子さんの「夕鶴」では、戯曲の言葉を使ったわらべ歌が郷愁を誘う。小林伴子さんのフラメンコによる「道成寺縁起」が素晴らしかった。動きを抑えた小林さんの踊りが女の情念を滲ませる。太田豊氏による竜笛(横笛)の音色には自由な旋律の中に確固とした芯があり、石井千鶴さんの小鼓には多彩な音色と厳格な音階が存在した。フラメンコと邦楽、3人の呼吸は自然に合っているように見える。しかしそれは繊細な感覚と強靭な意志の交感によるものであり、その緊迫感が人間の業のドラマを創り上げていた。雑賀淑子さんの琵琶とモダンバレエダンサーたちのコラボレーションによる「桃太郎」は、桃太郎に金銀財宝を取られた鬼たちが自給自足の畑仕事に喜びを覚えていくという、希望に溢れた楽しい作品だった。

全体にユーモアを感じさせる作品が多く、終始、楽しく観ることが出来た。シリアスな話の中にも救いがあったと感じる。「お伽草紙」というテーマ性もあるかも知れない。けれどそれ以上に、良くも悪くもユーモアやウィットというものが求められる時代になってしまったのだ、とも思う。