第1回パセオフラメンコライヴ森田志保

真のアートは、時間が経つにつれ、くっきりとした輪郭を浮かび上がらせ、記憶は鮮烈なものとなっていく。
昨夜の、エスペランサにおける森田志保さんのフラメンコがまさにそうだった。
その鮮やかな感受性の体現は、表面的視覚的なものとは対極の、胸のひだの奥深くに浸透する、想いのエネルギーに満ち溢れたものだった。
ディエゴ・ゴメスが2階バルコニーからサエタを歌う。観客は舞台の上に立ち、それを聴く。天上から降り注ぐ祈りの歌に包まれ、聴く人たちはゆるやかで静かな一体感の中にいた。
森田志保さんならではの、予想もつかないスリリングな展開。なのに観客は、大きな安らぎをそこに感じていく。限りなく深い森田さんの透明な宇宙、その隅々にまで張り巡らされた繊細な感性が、その空間を共有するすべての人の心をしっとりと受け止めているのだと感じる。
細やかな神経は、優しく、そして強い。
森田志保さんが全身で奏でる澄み切ったフラメンコは、人間の持ち得る眼に視えないエネルギーの可能性を確信させてくれる。
人生の曲がり角で、
森田志保さんのヴィジョンある美しい感性に触れられたことを幸運に想う。

(2月12日(木)高円寺エスペランサ 第1回パセオフラメンコライヴ)