パーボ・ヤルビィのブラームス

パーボ・ヤルビィ指揮、ドイツカンマーフィル演奏のブラームスを、NHK Eテレで放送していた。

ソリストに、ラルス・フォークトを迎えた、ピアノ協奏曲第1番。
第3楽章では、力強い推進力の中に、
ピアノの弦の張力とゴツゴツ戯れるようなウイットが溢れていた。
真剣に陽気なブラームス

交響曲第1番第1楽章の冒頭は、マエストーゾ(荘厳に)で演奏するものではない、と、パーボはインタビューで語る。
ベートーヴェン交響曲への想い、葛藤が伝わってくる曲であり、あの最初のティンパ二ーは、「壁に頭をぶつけながら、打開しようとする、ブラームスの心の叫び」だという。
そう言っていたとおりの、焦燥感のあるテンポの演奏。
ティンパ二―の乾いた音の連なりは、若い苦悩を思い起こさせ、
自らの苦い記憶と直結していく。
そこには生々しい躍動感がある。

ブラームスは決して老成していただけの人物ではない。
パーボの深い解釈から導かれた新鮮な演奏が、
ブラームスの人間的魅力を浮き彫りにする。

フラメンコにおける伝統、モダン、それらは対立要素としてよく語られることだが、表現において何よりも大切なのは、想像、熟考、挑戦なのではないか?
それがしっかりとなされていれば、伝統はいつまでも古びることなく、モダンは陳腐に陥ることがないだろう。
ふとそんなことを想う。