パコ・デ・ルシア追悼

美しい音楽を聴いた。それは天上に昇る響きだった。

クラシックギタリスト、福田進一さんと大萩康司さんのデュオによる、
ファリャの「スペイン舞曲第一番」と「火祭りの踊り」。
昨年急逝したパコ・デ・ルシア追悼のためのガラ・コンサート「パコ・デ・ルシアに捧ぐ」に唯一クラシック界から参加したふたりの名ギタリストによる至高の音楽は、光が柔らかく乱反射するように頭の中で響いている。

身体と楽器が見事に溶け込み、歌が溢れていた。
たとえば、胸の内と、表情や言葉がつながっていなければ、
どんな美辞麗句を重ねても、人の心には届かない。
それらが一致して、信じることができるとき、
初めて人の心に響いてくるのだとおもう。

一音一音に思いを刻み込んで軽やかに綴っていく、
福田さんと大萩さんの音楽の流れは、
次々と湧き出ながら一本の光の筋となり昇華していく。
つまびかれているはずのギターの音の対話は、まるで豊かな色彩を持つ歌声のように、つややかで滑らかなフレーズとなって、皮膚から快く浸透してくる。

自分にも他者にも誠実に、だからこそその音楽は自由自在に溢れてくる。

ファリャのエキゾチックな旋律は、身体と一体化したギターから発せられることによって血の通った生命体となり、生きることを謳歌するフラメンコに直結していく。

フラメンコ界のギタリストでは、ルンバ「二筋の川」を奏でた沖仁さんからそういった力を深く感じた。

クラシックの慎ましさ、フラメンコの貪欲さ、どちらも生を愛し抜くことで磨かれ、それらは限りなく重なっていき、境目は無くなっていく。

この日、25名のギタリストによってパコ・デ・ルシアに捧げられた音楽は、パコが生涯愛し続けた自由への祈りであった。