パセオフラメンコライヴVol.015 松丸百合さん

共振の涙。
パセオフラメンコライヴ Vol.015は、
松丸百合さんソロライヴ。
この日を切望していた。
彼女の万感を込めた踊りには、
透明な哀しみが溢れていた。
過剰も卑下も無い、混じりけのない哀しみは、
観る者の胸に、まっすぐに染み透ってくる。
パセオのスタッフとして動いていた私は、
舞台の半分も見ていなかったかも知れない。
それでも、伝わって来た。
いえ、だからこそ、高い濃度で感じたのだ。
彼女の想いが我が身を通過するときの震動は、
心をも震わせ、
いつのまにか、彼女の心とシンクロして震え、
そして、観る者の無意識の奥底にある哀しみを、
自然に呼び覚まし、引き出していく。
無意識? そうではない、
見ようとしなかったものかもしれない。
そして私たちは、引き出され、露わになった、
哀しみの正体に気付くのだ。
それは、愛であったと。
愛のはかなさゆえに、哀しむのだと。

すがえつのりさんのパーカッションソロは、
空気と溶け込み、柔らかく全身を包み込んでいく。
鼓動よりもさらに原初的な懐かしさ。
それは胎動であった。
かつて私自身をその内で育んでくれたもの。
そして、私自身が我が子を育んだもの。
気の遠くなるような太古からつながっているもの。
はかなくも永遠につながっているもの。

松丸百合さんの透明な感性は、
永遠の刹那に気付かせてくれる。
はかないからこそ愛おしく哀しい。
けれどそれは永遠につながっていくからこそ
希望を持てる。

松丸百合さんが柔らかな引力となり、
カンテの川島桂子さん、有田圭輔さん、
ギターの柴田亮太郎さん、石井奏碧さん、
ヴァイオリンの森川拓哉さん、パーカッションのすがえつのりさん、
共演者が皆舞台の上でつながっていた。
そしてエスペランサにいたすべての人がつながっていた。
このひとときでしか味わえない美しい調和だった。

終演後、松丸百合さんと優しいハグを交わした。
フラメンコにかかわれる幸せに、
こんなにも満たされたことはなかったと感じていた。

1月28日(木)20時開演
高円寺エスペランサ