工藤朋子さん パセオライヴ

パセオライヴVol.27 工藤朋子
 
進化、というよりも、純化したのだと感じる。工藤さんの踊りは凄絶さをいっそう増していた。
 
彼女の踊りから溢れ出る優しさの核にあるものを知りたいと、インタビューしたことがあった(パセオ2013年11月号)。故郷のおじいちゃんおばあちゃんが小さい頃から大好きで、高齢者の方の役に立ちたいという想いで看護師の資格を取った。介護施設で仕事をしていた頃は、身体の不自由な人の入浴の介助で、指の先まで洗ってあげた人がさっぱりした表情をされるのがほんとうに嬉しかったと話されていたのが印象に残っている。そして、身体も言葉も不自由な人には、話し掛けてとにかく反応を待つんです、とも語られていた。しゃべることが出来なくてもだんだんに気持ちが表れて来て、全身の細胞が騒ぐような感じになって、こちらに伝わって来るのだと。そう語っていた柔らかな笑顔が忘れられない。
 
フラメンコ一筋に生きると決めて数年経つ。深い優しさを惜しみなく他者に注ぎ、その優しさに触れた人の心から反射する暖かいものを敏感に感じ取り、それは工藤さん自身の内に大切に積み重ねられ、これまでは素朴に表れていたものが、時間とともに熟成されて、いま、工藤さんの踊りを支える大きなエネルギーとなって放射されていたように感じた。
 
そのパワーが、これまでの工藤さんのアーティスティックなフラメンコを打ち破り、彼女の内にあるもっと生々しい野性的なものを引き出し、露わにしていた。
 
啓示を受けた巫女のような存在感があった。倒れるのではないかと思うほどの凄味があった。けれど、彼女は倒れることなく、フラメンコの岩山を登り続けるだろう。人の持つ優しさという真の強さを本能的に知っているから。
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工藤朋子ソロライヴ
6/23 高円寺エスペランサ
カンテ:マヌエル・デ・ラ・マレーナ
    エル・トロ
ギター:斎藤誠
パルマ佐藤浩
    矢野吉峰
(写真撮影:小倉泉弥)