荻野リサ パセオフラメンコ・ソロライヴ

【荻野リサ ソロライヴ】
美貌に、深い陰影が刻まれていた。
昨年のパセオライヴでは
まだ美しい少女の面影を残していた荻野リサさんは、
内なるマグマを煮えたぎらせ続け、
その手に負えないほどのエネルギーは、
彼女を短期間で老成させ、
いま、彼女は、その苦悩の重みを
全身に宿していた。

自分に正直であろうとする想い、
自分自身でコントロールできないほどの重量を持ち、
まわりを巻き込んでしまうほどの、
その意思の正体は、
彼女の誇り高さだった。

自らが発したパワーで
巻き込んでしまった人々の愛情を、
荻野リサさんは痛いほど解かっていて、
それを彼女自身の愛をもって真剣に返そうとするゆえに、
彼女のアートの懐は、どこまでも深くなっていく。

荻野リサさんに宿る
ホセ・ミゲルの血を引く濃厚なフラメンコの魂は、
若いうちは本人でさえ、振り回されてしまうほど、
偉大なものなのだろう。

年を重ね、経験の層を厚くしてはじめて、制御でき得る、
誇り高い魂を、彼女は内側に抱えている。
その大いなるスケールの片鱗を鮮やかに示した、
高潔な舞台であった。 

パセオフラメンコライヴ
荻野リサ ソロライヴVol.36

11月10日 高円寺エスペランサ

荻野リサ(バイレ)
逸見豪(ギター)
マヌエル・デ・ラ・マレーナ(カンテ)
三枝雄輔(パルマ)