吉行淳之介さんのことをおもう

あまりにも出会いが遅すぎた、吉行淳之介さん。

本でしか対面していないけど、

こんなにもクールでエモーショナルで粋な男と、

恋愛をしたい。

10年くらい前に本の中の彼に恋に落ち、

文庫本も単行本も、ほぼ古本で買いあさった。

Amazonの守備範囲の広さを私はここで実感したなあ。

そしてとうとう新潮社の全集全15巻が私の部屋に来た。

初めての全集を手に入れたいと望んだ作家。

もし私が30年早く生まれていたなら、

ぜったいに宮城まり子さんと彼を競っただろう。

クールで明晰で研ぎ澄まされた文章なのに、


高濃度、高湿度の哀しみが滲み出ていて、

私の胸に浸透してくる。

文庫本一冊、お守りのように外出する時のバッグに忍ばせずにはいられない。

いつも想っていたい。そばにいたい。

恋に限りなく類似した感傷が呼び覚まされる。

彼の文章と、私を通り過ぎた男が幾度も重なって、

どうしようもなくなるときがある。

そんな記憶をそっとここに書いてみようかな。

それは私自身の大切な成分となっているから。