乙川優三郎『太陽は気を失う』

「よい喜劇には悲しみがたくさんいるのよ」

読み終わって残る切なさが、シビアでリアルなのがいい。
期待をやめたところから自分の人生が動き出す。
どんなに遅くとも。
それが自分だけのうれしい希望になる、と、乙川小説は示唆してくれる。
人生の終焉で、私は何を後悔するだろう?
改めて、そんなことを考えさせられる。

乙川の言葉はいつも、生きる上での鎮静剤にも覚せい剤にもなってくれる。

乙川優三郎 短編集『太陽は気を失う』(文春文庫)