今枝友加 パセオフラメンコ カンテソロライヴVol.101

今枝友加さんのカンテソロライヴ。

真の敬意とは、高ぶることなく奢ることなく媚びることなく飾ることなく、自分自身の持ち得る限りの一番良いものを相手のために捧げるということ。

素晴らしい心の交流を見た。それはなんと尊いことだろうか。

「魂と対話しながら歌いたい」。彼女はライヴに向けての心境をそう語っていた。まさにその想いが真っ向勝負となって実現していた。一曲目のソレア、音が生れようとする緊張感から、それは始まった……
今枝友加さんのカンテソロライヴ。エンリケ坂井さんとの共演は意外にも初めてで、「恐れ多くて夢のよう」だったという。

エンリケさんの深い懐の大海へ、今枝さんは畏れを知りつつもその奥にあるものを掴もうと飛び込んだ。和やかで真剣なリハーサルから見せていただいたのだが、初めのころはまだ遠慮もあった。けれどエンリケさんはどこまでも今枝さんを泳がせ、彼女も次第にその水に溶け込んでいくように自由に泳ぎ出す。

彼女の感情を受け止める大らかな眼差しに歓びが滲む。かつてスペイン修行時代に彼の地の往年の巨匠たちと共演した手応えを、エンリケさんは今枝さんに見出していたのではないだろうか。今枝さんを導くかのように、そして問い掛けるかのように、フラメンコの真髄を聴かせるファルセータをエンリケさんは軽やか弾く。その空気に包まれながら、エンリケさんを見つめる今枝さんの幸せに満ちた美しい微笑みが忘れられない。

なんて贅沢なライヴ! けれど誰よりもそれを感じていたのは、高みを掴む苦しみと歓びを知るもの同志が、自分のその身ひとつと時間とを相手のためだけに捧げ合ったふたりなのだと想う。

パセオフラメンコライヴ Vol.101
今枝友加 カンテソロライヴ
2018年10月17日(水)
高円寺エスペランサ
今枝友加(カンテ)
エンリケ坂井(ギター)