ブラームスの秋

ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番

 日中は、いつまでも続く暑さとの耐久戦にもつれ込んだようになっているけれど、夜はずいぶんと過ごしやすくなった。
 
 熱に浮かされたような夏の日々を引き摺りながらも、ブラームスの秋が近づいていることにふと気づき、その重厚な旋律を想いながら、少しずつ心に静けさを取り戻せそうな心境になっている。

 初めて買ったブラームス交響曲のことがふと脳裏に浮かんだ。まだCDが無かったころ、ショルティ指揮、シカゴ交響楽団による交響曲第一番のレコードを私は選んだ。ドイツ的な骨太の力強い響きだったと記憶している。
 
 名盤と呼ばれるミュンシュ指揮、パリ管のものは、その後CDで聴いて、堂々とした雄大な演奏に感銘を受けながらも、そのころの若かった私は、ショルティの引き締まった演奏の方が好きだと感じたことも覚えている。
 
 ミュンシュのCDは今も手元にあり、聴くたびに感動を新たにするが、ショルティのレコードはもう聴けない。
 
 レコードの存在は今の様々な音源よりもずっと貴重なものだった。少なくともそう感じていた。レコードに針が降りる瞬間には期待と緊張があり、一回一回を胸に刻み込みながら耳を傾けていた、あのゆっくりと流れていた時間がただ懐かしい。