「嘘の嘘は本当」篠山紀信

芸術新潮 2012年 10月号 [雑誌]

芸術新潮 2012年 10月号 [雑誌]

(引用)
「女優を撮るとき、化粧をして、いい服を着て、ヘアスタイルを整えて、撮る。これは嘘か?
 逆に女優がすっぴんで、朝起きて歯を磨いているときの顔を取ることが、その女優の本当?
 そんなことはない。女優というのは、自分を高揚させ、きれいにし、作り上げ、そして私は女優よ、って出て来たときが本当の女優だ。
 でもそれだけでは実はまだ本当ではない。ぼくは写真力を使って、もっとそれを増幅させる。アイドルはもっと可愛くアイドルらしく、女優は役になり切って、さらに美しく。嘘の上に嘘をつく。
 そのとき本当にリアルなアイドルや女優が現れる。
 ぼくは仮面を剥ぐとか、仮面を剥いだら本物が出るなんて全然思っていない。仮面の上に仮面をつけることこそ、その人のリアリティを獲得することだと思っている。」
(「芸術新潮」10月号より引用)

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 表現方法は違うけれど、相手が本当に伝えたいと思っていることを汲み取るためには、その人の言葉の上っ面をただ真に受けるのではなく、その奥にあるものまで読み取って分析し、翻訳しなければ、真実は伝わらない、という意味では、書くことも同じなのかも知れない。
芸術新潮」10月号に掲載されている写真からもその被写体たちの魅力は充分に感じられるが、写真展ならではの、大きく引き伸ばされた写真の隅々にまで漲る迫力も味わってみたい。


篠山紀信展 写真力」
東京オペラシティ アートギャラリー
10/3〜12/24
http://www.operacity.jp/ag/exh145/index.html



 写真つながりで。
 こちらは写真の伝える歴史思想の重みと深さを感じたい。
 ↓
「マグナムを創った写真家たち」
〜キャパ、カルティエブレッソン、ロジャー、シーモア
フジフイルムスクエア1F 写真歴史博物館(六本木)
http://fujifilmsquare.jp/detail/12090101.html