『エドワード・スタイケン モダン・エイジの光と影 1923-1937』

エドワード・スタイケン―モダン・エイジの光と影1923‐1937

エドワード・スタイケン―モダン・エイジの光と影1923‐1937

エドワード・スタイケン モダン・エイジの光と影1923-1937』

高貴、洗練、プライド。
そしてその凛とした緊張感は、
他人の眼に対するものではなく、
自分自身の美学への矜持。

被写体は、
全神経を研ぎ澄ませてそれを体現しようとし、
スタイケンもまた、
全神経を研ぎ澄ませてそれを捉えようとする。
だからモノクロの硬質なラインには、
緩みも甘えも一切無い。

美貌の女優の高慢さ
ロシア貴族のスノッブな誇り高さ
詩人の繊細さ
作家の知性
楽家の自信
政治家の傲慢

それらは
「らしさ」などという生易しいものではなく
その本質を磨き上げることで
彼らの所属する世界を生き抜いてきた
強靭な意志そのものの顕れである。

視線、ポーズ、光と影
細部に至るまで精密に計算されている。
「一流」とはこういうことをいうのだ。

フィルム・カメラの時代、
写真一枚に込めた双方の気迫が時を超えて
伝わってくるようだった。

本来、芸術にやり直しはきかない。
あらゆることが便利になり過ぎた今の時代だからこそ
この心意気を忘れてはならない。

スタイケンの写真一枚一枚がそういったことを改めて認識させてくれる。

http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html