フィエスタ・デ・エスパーニャ(2013-11-23)

『フィエスタ・デ・エスパーニャ』(2013年11月23日 於:代々木公園)

 楽しかった! いろんなシーンが万華鏡のように頭の中でぐるぐると回っていて、まだ興奮から醒めない。

 開会イベントの始まる10時ギリギリに着いたが、まだリハーサルをやっていて、いっこうに始まる気配がない。客席前方の、大きなプログラムを掲げている所に、見知ったような懐かしいような二人組を発見。久々のウェブ友さんたちとの再会でした。ひとりは4年ぶりくらいに会う方、そしてもうひとりは1年ぶりなのだけど北海道から来ている方。でも時間の距離も場所の距離もまったく感じることなく話がはずむ。みんなフラメンコが本当に好きなんだなあ。

 客席が少しずつ埋っていく様子を見計らっておもむろに司会者の女性が開会の言葉を告げる。こういったゆったりとした時間の流れが何だかスペインらしくていい。

 オープニング・ステージの池田聡フラメンコ×ジャズユニットが良かった。大渕博光さんの柔らかなカンテの声がスタイリッシュなジャズに似合っていて、うっとりしてしまう。『サマータイム』、続く『ソーホワット』はシギリージャ調で、そして『ヴェルデ』をルンバで、最後は名曲『スペイン』。ジャズの中にフラメンコが溶け込んでいるように感じた。さりげない寛容性を持つ音楽がクールに優しく心に流れ込む。

 そして堀越千秋氏のカンテ・ライブ。ソレア、アレグリアス、ロメーラ、氏のプーロ・フラメンコへの深い敬意が伝わってくる渋い歌声。気が付くと、最前列の座席はやはりフラメンコのオールド・ファンである渋い男性方が多く座られていた。明るい空にフラメンコの重みのある音が広がり、深い色彩を重ねていく。

 バイラオーラ、吉田久美子さんが率いる「ルナーレス フラメンコ」の35名の女性による踊りに心が華やぐ。有田圭輔氏のカンテが舞台を引き締める。

 12時過ぎ、スペイン料理の屋台はいずこも長蛇の列。お目当てのトルティージャなどはすでに売り切れ。けれど何を食べても目新しく、美味しいのであった。「ワイン、大盛りサービスです」と声を掛けられ、それでは、と赤を頼むと、コーラのLサイズのような勢いで注いでくれた。それを飲みつつ物販ブースを散策。鮮やかなフラメンコ・アクセサリーをほろ酔いで眺めながら、こういうのを身に付けて踊ってみたいなあなどという気持ちが浮かぶが「豚に真珠」という別の声も聞えて来たので、打ち消した。

 午後も、セビジャーナス講座や、ペルーのマリネラ・ダンス、キューバのボーカル・デュオのライブなど盛り沢山。スペイン語圏の文化の深みに触れることが出来た。

 そして幸運にも、フラメンコ・フラッシュモブに遭遇。演奏は有田圭輔氏のカンテ、三枝雄輔氏、シロッコ氏のパルマと超豪華だった。眼前で生の声を聴かせてくれるのだ。彼らアーティストたちと愛好家の人々が同じ目線で一緒になってフラメンコを楽しめるのが新鮮だった。

 彼らはその流れで、この日の最終イベント、スペシャル・フラメンコの舞台へと移動していった。そうと知っていれば、そちらを見たかったのだが、同じ時間帯に、スペイン・ワインセミナーを予約していたので、後ろ髪をひかれる思いで特設テントに向かう。でもこちらももちろん赤白、そしてカバの3種類のワインをじっくりと味わえて充実していた。なにしろイケメンのギャルソンにワインを注いでもらえるのである。たちまちゴキゲンに酔ってしまった。テントを出たらすっかり日は落ちていたが、屋台の照明の中、誰もが笑顔で語り合っていた。

 フィナーレでは三枝氏らのソレアが見られたそうである。それを見損なったのはちょっぴり残念だったが、このイベントの、プログラムには名前の出ていない数多くのサプライズには、何度もワクワクさせられた。踊りも音楽も楽しかった。屋台の食事も美味しかった。何より、スペイン大好き!という人たちが集ったフィエスタの、スペイン愛に満ちた空気の中にいることが最高に心地良い一日であった。