美術展『ロマンティック・バレエの世界〜妖精になったバレリーナ』

ニューオータニ美術館で開催されている
ロマンティック・バレエの世界〜妖精になったバレリーナ』を観てきました。

ロマンティック・バレエが成立したのは、フランス革命後の最も不安定な時代。
1830年の7月革命頃から約20年間が最初の黄金期。
踊られたテーマは当時のロマン主義文学と深い関わりを持ち、
物語の舞台は幻想的な異界や異国といった場所が設定されました。
白いバレエの原形といわれる『ジゼル』『ラ・シルフィード』は
この当時に生み出され、名作として今日も踊られています。

この展覧会では、当時人気のあったマリー・タリオーニ、ファニー・エルスラーを中心としたスター・バレリーナの版画や手紙、プログラム、再現された衣裳等によって、ロマンティック・バレエが成立した第一次黄金期といわれる20年間の流れを確認出来るようになっています。

展示の規模はそれほど大きくはありませんが、
静かな空間でゆったりした時間を過ごせるのが良いです。
とにかく、芸術の上澄みのような儚く美しい世界で、
ただうっとりしてしまう。

展示を眺めているうちにだんだんと
「お姫さま」や「ドレス」に憧れていた
少女だったころの気持ちに戻っていくのを感じて、
自然に微笑んでしまうような優しい心地になりました。

『演目紹介』の掲示(プログラムにも載っていました)があって、
この当時に創られた作品の説明が記されていたのですが、
それらのあらすじがなかなか興味深かった。
名作『ジゼル』や『ラ・シルフィード』と並んで
『ラ・ジターナ』とか『ラ・ジプシー』などといった演目もあり、
そういったエキゾチックなものも当時から人気があったようです。
それが何だかフラメンコの雰囲気を感じさせる。
物語は、貴族の娘がさらわれてジプシー娘として育てられ、
成長して、貴族の息子と恋に落ちる喜劇だったり、悲劇だったりします。
スペインの踊り子が登場する演目もありました。

スペインという異国への憧れもあったと思います。
それ以上に、貴族と対比したジプシーの存在に
何か象徴的なものを感じました。

貴族社会とはまったく違う、激しいもの、黒いもの、魔的なものに
潜在的に惹かれるものがあったのではないか、
と、そんなことを考えさせられてしまいました。

当時の貴族が履いていたという靴も展示されていました。
足幅が驚くほど細い。
重苦しいものを敬遠していたのでしょうか。
そういう風潮の中で、
だからこそジプシーを蔑みながらも、
どこか憧れを抱いていたのかも知れない。

今なお継承されている芸術の源流を辿っていくと、
その芸術の魅力の骨格が見えて来るのが面白い。

今回は、バレエの美しさの源と共に、
期せずして、
フラメンコ的なものの魅惑の普遍性をも垣間見ることが出来ました。

絵画でいえば、ドラクロワゴヤ
音楽でいえば、シューマンベルリオーズ、そしてショパンの時代。
そういった名前を思い出してみると、
当時のロマン主義の濃厚な気配をふと感じられるような気がします。


踊りが好きな方、美しいものが好きな方、ぜひ!
『ロマンチック・バレエの世界』ニューオータニ美術館 12月25日まで。
http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/201311_ballet/index.html