日本フラメンコ協会新人公演二日目

レベルの高い舞台が次から次へと続いて、
脳内モルヒネ分泌過多状態でした。

なかなか眠れない一夜が明け、
少し落ち着いた中で胸に残っている残像を思い起こしてみる。

小杉愛さんの深化にはストレートに感動。虚飾のない、自身との静かな対話から生まれるフラメンコ。
横山亜弓さん、確かな軸に裏打ちされた、しなやかでシックな美しさ。それはサパテアードの音にも表れていました。
小野亜希子さん、身体のラインの美しさが印象的。そこから生まれるしっとりとした流れから目が離せませんでした。
ブラシェ小夜音さん、タメのある、優美で力強いクレッシェンド。見事な求心力でした。

それから、エンリケ坂井さんのカンテの素晴らしさに改めてノックアウト。山谷祐子さん、そして佐藤幸子さんのプリミティブなフラメンコが、エンリケさんの歌声と共に重心がさらにしっかりと下がっていき、大地を踏みしめる踊りとなっていく。歌と一体になって充実感を増していく歓びが直に伝わって来ました。

そして、石川慶子さんと本田恵美さんのプロ魂。その息が詰まるような気迫に圧倒されました。音楽、衣裳、演出すべてにおいて隙がない。特に本田さんの「シギリージャ」。白いマタドールの衣裳は身体の動きをすべて露わにしてしまう。それはしっかりと意識されていて、例えばバストンや上着を持つ動きにさえまるで茶道の茶杓や袱紗を扱う所作のような静謐な緊張感が見て取れました。

最後にスペシャルセレモニーとして、カニサレス氏のギターが披露されました。フラメンコの最高峰はこんなにも澄み渡っている! なんてのびやかで清らかなのでしょう。日常の悩みとか不安、そういった袋小路から抜け出るような快感、そんな救いと歓びを感じました。これも同じフラメンコなのです。フラメンコというアートの懐の深さを再認識しました。

フラメンコの多様性を一度に味わう幸福感を、新人公演というこの場で共有できたというのは素晴らしいこと。
この新たな流れに、今後出演する人も観る人も、無関心であったり鈍感であったりしてはならないと自戒を込めて思いました。