日本フラメンコ協会新人公演三日目

(当日の個人的メモより)
この日もまた多くの素晴らしいアルテに触れることができ、さらにフラメンコの奥深さを感じたのでした。とくに印象に残っている4つのフラメンコ。
久保田晴菜さんの「タラント」。深いブルーベルベットのシックな衣裳。テアトロ系の格調高い踊り。エレガントなスペイン舞踊でドラマティックな舞台を流れるように構築していく存在感にスケールの大きさを感じました。
柴崎沙里さんの「ソレア」。重厚なパープルグレーの衣裳がペソのあるフラメンコをいっそう際立たせます。高い身体能力を駆使した気迫の踊り。しっかりと構成された舞台は視線を自在に導き集中させていく。そういった方向性を磨いていくことが作品に込められたメッセージを明確に伝えて行くことにつながるのだと気付かされる。なるほどヴィジョンとはそういうものかとふと思う。
小島智子さんのパリージョを用いた「シギリージャ」が素晴らしい。繊細な強弱や音程を持つパリージョの響きがカンテやギターと対話し三位一体となっていく。ノースリーブの黒い衣裳から伸びる白い腕はパリージョを鳴らしながらも全身と自然につながりしなやかに動く。背中と肩の柔軟性が生み出す音楽的フラメンコに見惚れました。
関祐三子さんの「シギリージャ」。身体のラインに沿うシンプルな黒の衣裳とシルバーサテンのペチコートがモダンな雰囲気を創り上げる。厳しい道を生き急ぐように疾走し、傷つき、立ち上がる。そんなドラマティックな作品。細やかにサパテアードを打ちながらシェネを繰り返すテクニックに目を奪われました。玄人好みの作品だと思う。

出演者の方々のそれぞれの挑戦は、必ずこの先のフラメンコ、そして生きていく上での糧となっていくことでしょう。三日間、アルティスタたちの命を削るようなアルテに接し、私自身も大きな力をいただきました。出演者そして主催者すべての方に心からの感謝をして止みません。ありがとうございます。