日本フラメンコ協会 第24回 新人公演三日目に思ったこと

「ファルーコ、大好きなんです!」

ファルーコ表紙のパセオをお求めのお客様に、

「この写真、かっこいいですよね!」とお声を掛けると、

そのように返してくださったときの満面の笑顔が忘れられません。

そんなひとつひとつのやり取りがとても楽しかったです。

新人公演の三日間、会場販売で、

パセオを通して本当にたくさんの方と接することができました。

お越しくださった皆さま、ありがとうございました!

さて、新人公演三日目、

この日特に印象に刻まれたのは、

土方憲人さんと、久保田晴菜さん。

お二方の、この日の踊りも本当に素晴らしいものでしたが、

それ以上に、それぞれの豊かな成長の仕方に感動しました。

土方さんは、数年前、スペイン留学前に新人公演に出れらたときの姿も印象的でした。

なんてまっすぐな誠実な踊りをする人だろうというのがその時に抱いた思い。

まず基本から学ぼうというていねいな姿勢にフラメンコに対する敬意が表れていて、

これからどのように成長していくだろうと楽しみにしていました。

そしてそれは想像以上でした。

アーティストとしての存在感ある風格。

骨太な男らしさとしなやかなセクシーさが同時に宿り、

それを内側から発散していました。

伝統的な薫陶を基礎に積み重ねた上に、

現代フラメンコのキレを取り入れた洗練された踊りに惹き付けられました。

そして、久保田晴菜さん。

この方も、数年前の新人公演で、赤い衣裳で柔らかに踊ったロメーラが忘れられません。

バレエを基礎に鍛え上げられた高度なテクニックを持つ方で、

いつ観ても、踊ることが好きで堪らないという幸せな気持ちが伝わって来ます。

美し過ぎる踊りがフラメンコでは裏目に解釈されるということは度々あることですが、

私自身はそれを疑問に思っていて、

その技を習得する過程にもフラメンコ的な苦悩があることを忘れてはならないと感じています。

ただ、そういった判断がなされがちな中で、

久保田さんは決して諦めることなく、

フラメンコを愛する想いで何年も取り組まれてこられたのだと思う。

この日のタラントには、彼女の高い技と深い想いがひとつになり、

またさらに小島章司舞踊団の一員として鍛えられた表現力が加わり、

彼女の持つものすべてが、この優雅でドラマティックな作品に昇華していました。

洗練した身体の動きにはまったく隙がなく、久保田晴菜さんの世界が純粋にそこに在りました。

このお二方の深化をみて、ああ、人は希望を持つ限り変われるのだ、と、

大きな勇気をもらったように感じています。