パセオフラメンコライヴVol.18 森田志保ソロライヴ

古き良き時代のフラメンコ。
ディエゴ・ゴメスが、どこか懐かしく感じる旋律を歌い始める。
2階からカスタネットの音が響き渡る。
小気味よい、そしてゆったりとした音の連なり。
森田志保が、カスタネットを鳴らしながら階段を降りてきて、
客席の間を縫うようにして舞台へと向かう。
柔らかなブラソのシルエット。
客席と舞台と。階上と階下と。
森田は静かに対流を起こし、遮るものを取り払い、空間を暖めてゆく。
エミリオ・マジャは立ち上がり、ギターを抱えながら、軽やかにかき鳴らす。ディエゴ・ゴメスは、さりげなく洒脱な装飾音を施し、艶のある声でのびやかに歌い紡いでいく。容昌は、遠い記憶を呼び覚ますようにリズムを刻んでいく。4人のフラメンコがゆるやかに絡み合う。
しなやかに空気を掬い上げるようにして舞う森田のケブラーダは、喉の乾いた旅人に、清流を掬い上げ与えるような慈しみがある。
何の気取りもなく、ただ相手の一番欲するものを惜しみなく差し出す清々しさと優しさがある。
明かりを落とした舞台横で、衣裳を着替え、身支度する森田志保の姿に、ふとときめく。
男が男であることを、女が女であることを、素直に楽しむことが許された時代、フラメンコはもっと人々の想いに寄り添っていて、疲れた大人たちは、洒落た癒しを求めてタブラオに集ったのだろう。
人生の痛みと苦みを胸に秘めた男と女の陰翳が、フラメンコを粋にする。
森田志保のシックなフラメンコの夜だった。

パセオフラメンコライヴ Vol.18
森田志保ソロライヴ
3月10日(木)
森田志保(バイレ)
ディエゴ・ゴメス(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)
容昌(パーカッション)