郄野美智子 パセオフラメンコソロライヴ

奔放でありつつ、郄野美智子に二言は無い。爆発したいと語っていた通り見事に燃焼し切った。

2度目となるパセオライヴ、郄野美智子はフラメンコのド真ん中にきっちり勝負を賭けてきた。バイレはグアヒーラ、タラント、ソレアの3曲。構成はギターとカンテのみのシンプルな三位一体。勝負の力みを感じさせないところが彼女の粋だ。

グアヒーラ。目の前が開けたような突き抜けた明るさ。表情がくるくると変わる。それは創り込んだものでも意図したものでも無く、その瞬間に起こることに自らハッと驚く新鮮さに満ちていて目が離せない。タラントで郄野は本領発揮した。エッジの効いた踊り。繊細な指の動きから情念が絞り出される。鍛え抜かれたスレンダーな身体がしなる。身に付けているものを剥いでいくように様々な色香が現れていく中で、ドゥエンデは降りて来るものではなくこの人の素の中にあることに気付かされ惹き込まれていった。そしてソレアへ。張りつめた空気から解放に向かう瞬間の笑みに郄野の内に棲む美しいイヴが剝き出しになった。

長年のパートナーである原田和彦のギターは、郄野の深層を読むように寄り添い、彼女ならではのきらめきに陰影を与える。マヌエルのカンテは、郄野をどっしりと受け止めいっそう自由に踊らせる。常に人との対話を何より大切にする郄野の想いが一体となり自然なフラメンコを生んでいた。フィンデフィエスタで郄野が客席に向けて送った艶やかなウィンクに射抜かれた。
「やりたいこと、やってみたいことはたくさんあったけど、それを全部捨てる覚悟ができたの」
終演後、すっきりした笑顔で郄野はそう言い切った。自分に何かを付け足さねばならないという欲や焦りから解放された時、初めて本来の自分に向き合える。そこからが勝負。天真爛漫に真剣に、自分に正直に生きる郄野美智子をこれからも追い続けたい。それはほとんど恋といっていい。

パセオフラメンコライヴVOL.84/
郄野美智子ソロライヴ

2018年3月22日(木)/東京(高円寺)カサ・デ・エスペランサ
(バイレ)郄野美智子
(カンテ)マヌエル・デ・ラ・マレーナ
(ギター)原田和彦