森田志保 パセオフラメンコライヴ Vol.89

死ぬんじゃないかと思った。
臨死体験を共にした感覚。
それは畏れ、祈る、静かな想いだった。
フラメンコの年代記を紐解き、フラメンコの本質に迫るライヴは、
まさに巡礼の旅だった。

1時間強、着替えもせず、舞台に乗ったまま、
森田志保さんは踊り切り、今枝友加さんは歌い切った。
森川拓哉さんもエミリオ・マジャも、弾き切った。
いにしえのフラメンコを、
細密に解読し、理解し、毛細血管の先にまでも血肉化し、
我が身を捧げるアルティスタの姿は、なんと激しく神々しいのだろう。
ソレアで、両手を広げた森田さんは、磔刑のキリストに見えた。
汗が光り、やつれたようにも見えるその表情には、
信じるものに命を尽くす恍惚があった。

そう、信じるものに命を尽くせる者は、幸せなんだ。
自分には何がある? 客席の誰もがそう思っただろう。

純粋なフラメンコを見た。
神聖な澄んだ想いが残る。

森田志保さん、今日の舞台を、ありがとう。



パセオフラメンコライヴVol.89
森田志保 ソロライヴ
2018年5月16日(水)
高円寺エスペランサ
森田志保(バイレ)
今枝友加(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)
森川拓哉(ヴァイオリン)