チャチャ手塚 パセオソロライヴVol.102

チャチャ手塚さんのパセオライヴ、熱かった!

スタートが“喜びの歌”アレグリアスなのが、チャチャさんらしい。
続いておなじみ『Me va me va』のリフレインにときめく。歌で鍛えた筋肉と、踊りで鍛えた筋肉、そして呼吸の連動から生まれる生声は、たとえ後ろを向いていても、張りのある背中から声が響いて来て気持ちいい。息の長いパワフルなビブラートからピアニッシモまで、臓腑を震わせる。

全10曲のプログラムには短い翻訳が書き添えられており、豊かな表情と声色で歌い継ぐ姿は女優のひとり芝居を見ているようで、愛の世界に引き込まれる。山粼まさしさんは、つきあいの長いルンベーラがいとおしくてたまらない、あうんの呼吸でギターを奏でる。艶のあるグラナイーナに聴き惚れた。三枝麻衣さんは、大親友鈴木眞澄さんの娘さんで幼い頃から知っている。チャチャさんの懐から飛び立つような怒涛のソレアを踊り、歌とのコントラストを見事に際立たせた。そしてカンテの永潟三貴生さんも敬愛するルンベーラの世界観を知りつくし、ソフトな歌声で包み込む。クライマックスはふたりの声が絡み合う熱いデュオ。心がとろけた。

終演後のカウンター。お母様の介護をされているという話が自然に会話に出て来る。チャチャさんの大ファンという女性が、以前習っていた頃にチャチャさんがプレゼントしてくれたという手編みのセーターを着てライヴに来られ、再会を喜び合う。綺麗な編み込み模様の白いセーターは、整然と揃った目で柔らかく編まれていて、かなりの腕前と一目で分かる。几帳面な素顔が新鮮だ。周りの人々との関わりを大切にしてていねいに暮らす姿が伝わって来る。

アートは生き方を映すものだが、フラメンコは特にそれが濃い。歌い踊るダイナミックなチャチャさんのフラメンコはどっしりとした生活感と地続きだ。アートと生きることに何の隔たりも無い。だから舞台の世界を信頼できる。

華やかなカーテンコールの後も拍手は鳴りやまず、最後の最後に息を切らしながら舞台に戻り、振り絞るようなブレリア一振り、突き抜けた笑顔で応えた。70分歌い切って、どこにそんな力が残っていたのか。すっきりクールに終わらせることもできたのでは、という問い掛けに、そうなの、でもね、やっぱりお客様なのよ、とチャチャさんはきっぱりと答えた。タブラオを生き抜いて来た女の、艶やかな笑顔で。

パセオフラメンコライヴ Vol.102
チャチャ手塚 ソロライヴ
2018年11月8日
高円寺エスペランサ
チャチャ手塚(ルンベーラ)
山粼まさし(ギター)
永潟三貴生(カンテ)
三枝麻衣(バイレ)