パコ・デ・ルシア『シルヤブ』

シルヤブ

シルヤブ

パコ・デ・ルシアの『シルヤブ』を聴いています。
20数年前にカセットテープで初めて聴いて以来、
私の内でこの曲の魅力はまったく色褪せない。
もちろん誰にとってもそうだと思う。
フュージョンという言葉は当時すでにあったけれど、
そういったジャンルの音楽はどれもどっちつかずの
中途半端なものだという偏見を持っていた。
けれどこの曲は違った。
ジャズのエッセンスが融合することで、
フラメンコの熱い魅力がこんなにも濃厚になるものかと思った。
その感動はただちに胸に浸透し、今も鮮やかに焼き付いたままだ。
パコのギターは革新的でありながら、
それは尖っているだけでは決してなく、
誰もが言うように、懐の深い普遍性があったのだと思う。
だからあの頃、
フラメンコを齧ったばかりの私のような人間さえをも
虜にした。
そんなことを思い返している。

パコを直接聴くことが叶わなかったことは残念でならない。
けれど、例えそれがアルバムを通してであったとしても、
フラメンコの歓びというものを
与えてもらったことは事実なのです。
それを今度は誰かに伝えて、共有できたらと思う。
そしてパコの生き方にならって、
そこに何かを少しでも積み重ねていくことが出来れば
さらに理想的なのですが。

今宵はきっと、世界中でパコのギターが静かに流れていることでしょう。

心からご冥福をお祈りいたします。