『バラと桜の祝祭』初日

フラメンコの豊饒な広がりを感じました! フラメンコとモダンダンスのコラボレーション『バラと桜の祝祭』初日の舞台を観て来ました。

山田恵子さんと花輪洋治氏による、誇り高いスペイン舞踊『ソレア風の前奏曲』で幕が開く。
加藤みや子ダンススペース『カディスの娘たち』の解放的なモダンダンスにはアンダルシアを照らす明るい日の光の放射を感じ、そこにはスペイン舞踊へのオマージュが満ちていた。
鈴木敬子さんの『ダンサモーラ』、イスラム薫るしなやかなベリーダンスにフラメンコの魂を注ぎ込む舞いは、観る者の情感を熱く呼び覚ます。
石井智子スペイン舞踊団は歴史あるアンダルシアの洞窟のフラメンコを絵画的な美しい色彩で蘇らせていた。
鈴木眞澄スペイン舞踊団はファリャの『はかなき人生』に乗せてスペイン古典舞踊を優雅に舞い、格式高いフラメンコの世界に観る者をいざなう。
三澤勝弘さんはギターソロによる「シギリージャ」でフラメンコの深淵を聴かせ、石塚隆充さんは日本語弾き語りによる「ファンダンゴ」でフラメンコの精神ををぐっと身近なものに引き寄せてくれた。
そして8人の素晴らしい名舞踊家によるクアドロフラメンコは見応えのあるものだった。凄い顔ぶれ。中でも印象深かった二人、森田志保さんのタンゴにはモダンな中にも野性味のある色気を感じた。ソレアを踊った本間牧子さんの凛とした眼差しには深い愛の信念が宿っていた。
小林伴子フラメンコスタジオ・ラ ダンサによる、カスタネットパルマ、打楽器のみによるパフォーマンスはうねるような昂揚感をもたらす。エレガントで繊細な響きの中にフラメンコのコンパスの原始的な躍動感が溢れていた。
曽我部靖子舞踊団は、洗練された斎藤崇也さんのピアノフラメンコと大渕博光さんのラテン調カンテに乗せた美しいフォーメーションの連続で、都会の夜風を感じるようなシックでドラマティックなフラメンコの世界を創り上げた。

モダンダンスは放つことによって、そしてフラメンコは秘めることによって、普遍に辿り着く。
そんなことをふと思った。
舞踊にはそれぞれに歴史があり、その成り立ちによる性格が内包されていると思う。そういったものが同じ舞台に上がることでその源流や相違が浮き彫りになるのが興味深く面白い。

フラメンコとモダンダンスといった異ジャンルの競演によって、芸術は自由度を増す。境界線上で互いのカラーをグラデーションに混ぜ合わせたり、あるいは大胆に取り入れたり、影響を及ぼし合いながらスリリングな挑戦を重ね、それぞれの可能性を豊かに広げ深めていく。そしてその融合は新たな舞踊の歴史を築いていく。そんな希望を感じます。

記念公演ならではの華やかな昂揚をぜひ体感してみてください。

5月23日(金)まで。池袋の東京芸術劇場 にて開催。http://www.anif.jp/event/others/new_others … …